目次現地情報バスラから2008
バスラにねずみが!

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  1月2日にバスラに薬が無事に届いたことを報告した。その時のことだ。ローカル・スタッフのイブラヒムとなかなか連絡が取れず、心配になっていたのだが…。
  イラク政府の許可を取るのに3日かかった。トラックのドライバーはノーマンズランドで立ち往生。イブラヒムは、国境近くの親戚の家から毎日交渉に走った。1月2日の夜、私はアンマンにいたが、イブラヒムから電話が入り、「作戦は成功。バスラの産科小児科病院に無事に届けた」とうれしそうだ。「この作戦名はなんと言うのだ」とイブラヒムが聞いてくる。
  「作戦?」そういえば、作戦に名前をつけていなかったのを思い出した。米軍やイスラエル軍は、軍事攻撃に「砂漠の狐」とか「怒りの葡萄」とか、まるで小説の題名のような名前をつける。僕たちは、そういうのに対抗して、「冬のかき氷」「サンタの穴あき靴下」「限りなき義理の愛」「砂漠のゴール」「砂漠のモロヘイヤ」などと名前をつけてきたのだった。しかし今回は、あまりに忙しく、そんな余裕はなかった。
  イブラヒムは、前線で数々の作戦に参加してきた同志であり歴戦の勇者である。
「何だ?! せっかくこんなつらい思いをしているのだから、かっこいい名前をつけてくれ!」とでも言わんばかりのイブラヒム。私が、すんなりと作戦名を言わないことに明らかにむっとしていた。そんな、急に言われても…。通常、作戦名は、一晩寝ずに考えて生まれてくるものなのだ。

  数日後、オーストリア経由で写真が送られてきた。なんと私たちの送った積荷から薬が抜き取られていたのだ。国境を越えて荷物を送るのは非常に難しい。写真で見ると、まるでねずみがかじったように、ダンボールが破れている。被害総額が気になる。しかし、この薬「アズレン」は、幸いにも抗癌剤ではなく、咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷などに効くうがい薬だ。いくら盗られたかわからないが、写真から判断して1000バイヤルとられたとしても単価の安い薬なので、6.1円×1000=6100円の損害だ。今回送った薬の総額は1500万円を越えていので、損害は微々たるもの、ほぼゼロに近いと言ってもいいだろうだ。今回の作戦はまさに大成功だと言えよう。
  ところで犯人は? 写真に写っているベレー帽はイラク兵のものだ、怪しいのは…。今年は、ねずみ年だし、今回の作戦は、「国境のねずみ作戦」とでもしておこう。
  ねずみも運がよかったのかもしれない。ヘタに抗癌剤をかじったら、毒性が強いのでその場で死んでいたかもしれない。せめて、盗んだ薬でうがいでもして、ばい菌をばら撒かないでほしいものだ。
  それにしても、今まで薬を送り続けて5年になり、総額は一億円をとっくに超えてしまったが、薬の紛失がこの程度で抑えられているのは、奇跡的だ。現場を支えるJIM-NETスタッフ、協力者の努力が、奇跡を呼んでいるのかもしれない。
  2008年はイラクの子どもたちにとって一体どのような年になるのだろうか。そう簡単に平和にはならないと思うし、劣化ウランの影響が出始めるのもイラク戦争から5年目の今年あたりかもしれない。
  まだまだ、支援が必要だ。

佐藤 真紀 (事務局長)

写真、上から、 病院に薬が到着。到着した薬を早速チェック。ねずみにかじられた薬の梱包。