|
バスラ、川沿いの地区へ緊急水支援 
コレラに関する報道が、現地メディアでも少なくなりつつあるが感染者の数は増えており、10月4日のイラク保健省の発表によると感染者は417人、コレラによる死亡者は6人になった。
バベル 222人
バグダード 69人
バスラ 44人
カルバラ 34人
ディーワニーヤ 30人
アンバール 8人
ナジャフ 5人
ミーサーン 3人
ディヤーラ 1人
特にバスラにおける増加がここ数日で目立ってきているようである。バスラではコレラ発生が報じられた初期の段階で、高齢の女性が感染により死亡したことが確認されている。また感染の多くは抵抗力の弱い子供である。地域的には、バスラの中でもほとんどの感染者がアブー・ハスィーブという地区から出ていることが確認されている。アブー・ハスィーブ地区はどういうところなのか、ローカル・スタッフのイブラヒムに聞いてみた。
イブラヒーム:「ここは、チグリス・ユーフラテス川のすぐそばに位置しており、ナツメヤシの木が豊富に植えられているところです。ヤシが豊富に植えられている様子はバスラを象徴しているといってもいいでしょう。とても美しいところなのです。しかし非常に貧しく、公共サービスが行き届いてない地区でもあります。そのため、清潔な水を供給するネットワークが遅れていること、それに加え、川に隣接する地域であることから、この地区の多くの住人が川から水を汲み、それを飲んでいるのです。また今年の3月に政府が行った軍事作戦で多くの被害が出たところでもあります。ここアブー・ハスィーブは今年になって多くの困難に見舞われた地域なのです。」
このような状況の中JIM-NETでは、ペットボトルの水支援を決定。JIM-NET構成団体の一つ「アジアと結ぶ市民の会・長崎」の支援で1200ドル分のペットボトルを購入した。
イブラヒムによると、10月4日、バスラから20kmほど西のイラン国境近くの町アブ・アルカーシブの中でも都市部とは離れたバーブ・アルアリーズ地区、バーブ・アルタウィール地区、ハマダーン地区、ムナッザマ地区などを車で移動しながら水の供給を行った。この地区は川に隣接し、コレラに汚染された水を飲む危険性が非常に高い地域である。
水を受け取りにきた、この地域に住む
老女: 「孫のハイダルが(1歳)がコレラにかかって入院してしまいました。水が汚いためです。」
少女: 「きれいな水をありがとう、でも病気にかかるのが怖いから、水をもう一度配って欲しいな。」
住人男性: 「ここではたくさんの人がコレラにかかっている。でも政府は予防の宣伝をするばかりで何もしてくれないんだ。強い怒りを感じるよ。」
現在バスラでは、ここアブー・ハスィーブ地区以外でもクルナ地区、サラージャ地区、ズバイル地区でも感染者が出ているようである。イブラヒムの友人の息子もコレラにかかっているという。
バスラはこれまでにも、水の問題に悩まされ続けてきた。水を供給するためには電気が必要だが、その電気の供給が安定しない。電気省大臣カリーム・ワヒードは9月の記者会見で「電気の安定供給のためには、治安の安定が最も重要である。」と述べた。彼が電気省大臣に就任して以来、電気事情の改善がみられないために住民が解任要求のデモを行ったが、それに対するコメントである。イラクの治安は改善の傾向にあるとはいえ、いつ何時、身を潜めていた武装勢力が戻ってくるかわからない。特にバスラはイランとの国境に接しており、イランからやってくる武装勢力の巣窟になっているとされている。
前述のアブー・ハスィーブは現在のバスラの保健状況の悪さを象徴しているようなところである。コレラ以外にも、ここにはがんに冒された子供がおり、バスラ小児産科病院で治療を受けている。 治療のためには清潔な水や、電気が欠かすことができない。これまでもこの病院では水がまったく来ないなために治療に大きな障害が出てしまっていた。水の問題はもちろんバスラだけではない。コレラが最も蔓延しているバベルでは、除去しにくい発がん性物質が飲み水に含まれており、バベル水道局長は問題解決のため、政府に介入を求めている。
現在のイラクは一般市民の衛生環境の悪さが目立つ。コレラ以外にもイラク北部のドホークで炭素症に感染した患者が20人報告されている。さらに先月カルバラでは放射性廃棄物が不法投棄されていたとのニュースもあった。イラク政府は、現在のところ、州議会選挙法問題やアメリカとの治安協定で手一杯のようすだが、何よりもこれからのイラクを作っていく国民の健康に関心を払ってほしいものだ。
08年10月6日
加藤 丈典(JCF/JIM-NET)
|