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JIM-NETはイラクのがん・白血病の子どもたちの支援をしています。
イラフ、イラクに帰る!!

  9月の終わりにおじさんのお葬式に出るため、しばらくイラクの実家に戻っていたイラフでしたが、ヨルダンで治療を続けるため、1月の初めにお父さんとアンマンにもどってきました。
  脳腫瘍の治療のスケジュールがあるので、ほんの2週間だけの里帰りのはずでした。しかし、イラフたちが帰省した直後から、自宅のあるディアラの治安が悪化し、村から外へ出ることができなくなり、2か月近くも音信普通になっていました。アンマンではJIM-NETスタッフや他のイラク人患者の家族たちもイラフとお父さんの安否を心配していました。
  2か月間治療が中断してしまったことで、がんが転移したり、再発したりしていないか…、とにかく早く検査をうけなければ! 急いで、検査の手配をしました。結果が出るまでとにかく不安でした。1月下旬の血液検査、MRIの検査の結果、がんはすっかり消えて、当初の予定ではあと5か月続ける予定だった化学療法ももう必要ないことになりました。あとは2、3か月に一度、MRIで脳や脊髄の検査をして、再発していないかどうか経過観察を続けます。

  アンマンにお父さんと戻ってきたイラフ、しばらくはホームシックで機嫌が悪かったようですが、すぐにお父さんと二人きりの生活に慣れてきたようです。2ヶ月間お母さんのおいしい料理を食べたせいか、ずいぶんとふっくらとして(体重25キロ、ちょっと太りすぎ? )抗がん剤の治療もしていないので元気全開です。
  今まで事務所に遊びに来ると、積み木やお絵かきをしていることが多かったのですが、最近はおままごとに熱中しています。お昼ごろには「お昼ご飯作ってあげる、お肉を料理するね」「晩ご飯作ってあげるね。卵とチャイ、作るね」・・・そして、洋服ダンスがイラフのおうちです。扉をノックすると「イラフは留守です。出かけています」と返事が返ってきます。ずいぶん、いろんなおしゃべりをするようになりました。小さなおままごとセットの鍋で器用に豆(おはじき)のスープを作ってお皿に盛り付けたりもできるようになりました。小さなボールを口に入れるので「のどに詰まらせたらたいへん!」ととりあげたところ、「口に入れないから、返してちょうだい」といいます。ボールを渡したところ、もう二度と口にいれませんでした。夏には、道端でもどこでも、ところかまわず、ひっくり返って金切り声を上げ、ダダをこねていたイラフもずいぶん聞き分けがよくなったようです。
  がんが消えて、身も心もずいぶん成長したイラフ、お父さんは今、イラクへ帰る準備で大忙しです。アパートの部屋の大きな旅行かばんには荷物がパンパンに詰め込んであります。 
  3月8日、今日はいよいよイラクに帰る日です。
  もうタクシーが来るというのに、イラフはまだ寝ています。イラフが動き出さないうちに、お父さんは山のような荷物を車に積み込み、部屋を片付けます。ようやく、目が覚めたイラフですが、西村の顔を見て、布団をかぶったまま「これだーれ? って言って!」と遊び始めます。「これだーれ?」と聞くと「わたしはネコでーす。ミャウ!」「私はいぬでーす。ワウワウ!!」「イラフはいませーん!」と昨日の続きです。突然、布団をがばっとはいで起き上がり「ハイ、イラフです!!」ととびきりの笑顔をみせてくれました。
  イラフは帰国のために新しく買ってもらった真っ赤なワンピースとジャケットに着替えました。「イラフが病気になってからの3年、長かった…」とお父さんは涙ぐんで言いました。イラフとお父さんの長い長い2人3脚も、もうじき終わります。「イラクに着いたら、このきかん坊のイラフの世話は母さんがするんだ!!」とお父さん。

  アパートの玄関でイラフは顔見知りのおじさんたちともお別れのあいさつをしました。「寂しくなるなー」特にイラフと仲良しだったおじさんが言いました。「治ってほんとによかった」バグダッドから白血病の娘をヨルダンに連れてきたという向かいの部屋のお父さんはうらやましそうに、そして、自分のことのように喜んで言いました。「お母さんのところに帰るんだね、よかったね」とアパートの管理人さんに言われてこっくりと頷くイラフ。さっきまで「どこへお出かけするの?」と言っていたのに、大きな荷物や周りの大人の話を聞いてだんだん実感がわいてきたのでしょうか。
「マアッサラーマ、バイバイ」と手を振って、今日は“洋服ダンスのおうち”ではなく、お母さんのいる本物のおうちに帰っていきました。ちょっとさびしくなりますが、“うれしいさよなら”でした。
  今日は、アンマンは朝からとてもあたたかです。遠くの空が白くかすんでいて、砂嵐が心配です。飛行機の出発の時間から4時間たったころ、お父さんのヨルダンの携帯電話に電話をしてみました。「ツー」といったきり、何の反応もありませんでした。どうやら、飛行機は無事飛び立ったようです。(イラク行きの飛行機はよく遅れたり、飛ばなかったりします)あとは無事到着のニュースを待つばかりです。

08年3月8日

西村 陽子(JIM-NET/アラブの子どもと仲よくする会)

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