ブラジリでいこう!
「今日よりは明日のほうが悪くなる」運送屋のおやじは、イラクの状況にいつも悲観的だった。「最悪、最悪」と言い続け、「砂漠のゴール作戦」も最終日が当然のように最もひどい日というわけだ。
縁起を担いで、快進撃を続けるブラジルにあやかろうと、アンマンにいるイラクの子どたちからなる応援団を結成した。しかし、輸送に使う車両が、バグダッドからアンマンにたどり着けないという。
「やっぱりな…。」
予感はあった。ちょうど、この日、サドルシティの市場で、シーア派の住民をターゲットにしたテロがあり、約70人が死亡したという知らせが入っていた。その影響だろうか。
2日前、アヤちゃんが偵察任務を兼ねながら、バグダッドからあがってきたときも、国境で7時間待たされたと言っていた。病院の診断書がなかったら追い返されていたかもしれないという。
輸送に使う車両は、バグダッドから乗客を運んでくる。その乗客が入国できず、車が立ち往生していたようだ。結局、クルマの手配がうまくいかず、キックオフは一日延期。7月2日に持ち越された。
今回の作戦は、ともかく最強といわれるブラジルにあやかるわけだから、ブラジル−フランス戦でブラジルに勝ってもらわないと困るのである。そこで、子どもたちにはチーム・ブラジリ(アラビア語ではブラジリと発音する)を結成してもらい、近くのカフェでブラジルの応援をすることになった。
さてその前に、子どもたちみんなで練習。ついでにメンバーを紹介しよう。
左からムハンマッド(51歳) ゴールキーパー。ジーコを見て育った世代。年なのでほとんど動きは期待していないが、いざという時には頼りになる。
さて、キッズ・メンバーについては、こちらをクリック!! 

実は、今までアハマッドがあまり元気がなかった。弟のビビは、最近ヨルダンのサッカークラブに入って、本格的に練習を始めた。しかしアハマドは、まだグランドに出られるほどの体力はない。薬の副作用で太ってしまい、写真を撮られるのをかなり嫌がっていた。しかし、模擬ワールドカップを一番楽しみにしていたのはアハマッドだった。ソックスとシューズも準備して気合が入る。そして顔にはブラジルの国旗のペイント。自分から写真をせがむ。こんな、楽しそうなアハマッドは久しぶりだ。
そして、バグダッドからやってきたアヤちゃん。おとなしそうに見えても芯が強く、かなり勝気。だんだん調子に乗ってくると、義足の右でもシュートを放つ。うまくトレーニングすれば、もっと走りこめるだろう。攻めきりたいジムコ・ジャパンには、心強い援軍だ。
子どもたちはそれぞれ、希望をこめて、ボールをけりこんでいった。
さて夜、待ちに待ったブラジル-フランス戦。薬のけりだしがなくなったのでじっくり観戦。アハマッド、ビビは一番前でかぶりつき。口笛ビュービューと応援にも熱が入る。アヤちゃんの家族は、今のバグダッドでは望むことが出来ない平和な空間を楽しんだ。しかし、残念なことにブラジルは敗退。ブラジルの常勝ムードでJIM-NETにも一気に運を呼び込もうという作戦が外れてしまった。
がっかり肩を落とすが、「砂漠のゴール作戦」の最終日を明日に控えて、落ち込んでもいられない。気持ちの切り替えが大切だ。
佐藤 真紀 (事務局長)
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