8歳のマフムード君は2005年2月に体調を崩しましたが、イラクではきちんとした検査ができず、病名がはっきりしませんでした。通常白血病になると白血球の数が増えるのですが、マフムード君の場合は違っていました。そこで、2005年5月にヨルダンで診察を受けたところ、急性リンパ性白血病だと診断され、今もヨルダンのキングフセインがんセンターに通っています。
今日は、マフムードのお姉さんサファの作品を紹介します。
レポートしてくれたBanaさんは、ふだんは日本の保育園で働いていますが、休みをとっては、おもにパレスティナを訪問して、子どもたちと触れ合っています。今回はJIM-NETのボランティア活動に参加してくれました。
JIM-NETでは子どもたちの刺繍作品など希望される方にオークションを行います。収益はすべて、患者の家族へ直接届けます。詳細は近日中に告知いたします。
太陽の刺繍
9月7日午前。昨夜約束をした時間にサファちゃんのお宅を訪問した。
「マルハバ−!」歯磨きを終えたばかりのサファちゃんが、にこやかな笑顔とともに現れた。サファちゃんは絵を描くのがとても上手な女の子。私はサファちゃんが描く太陽の絵が大好きだ。おだやかにふりそそぐ日差しを思わせる光線。まぶたからのぞく優しい目。サファちゃんならではの太陽。今日はその太陽をサファちゃん自身に刺繍してもらおうと思ってやって来たのだ。
イラク人の彼女は少し発達が遅れているため、特殊教育センターに通わなければならないのだが、現在どこにも通学できずにいる。なぜなら、イラクでは無料で通学できるセンターに、イラク人である彼女がヨルダンで通うためには、多額な費用がかかるからだ。今はほとんど家で過ごしているとのことだった。
サファちゃんは糸と針を手にした経験があまりないようだった。ひょっとしたら彼女にはちょっとも難しいかもしれない。でも、話をしてみると、目をきらきらさせて「やってみたい」と言う。それでは、とまず下書きをしてもらった。さらさらと筆を進めるサファちゃん。私の大好きなあの太陽の絵が、みるみるうちに紙に姿を現した。それを布に写し準備完了。
まず一刺し目。針を図柄どおりに刺そうとしている気持ちはよく伝わってくるのだが、位置がずれそうになる。
「うーん、もうちょっとこっち。」日本語で話す私の言葉がわかるかのようにもう一度刺しなおそうとする。今度は大丈夫。次はここから刺して、その次はここ…。はじめのうちは裏から刺さなければいけないところを表から刺そうとしたり(子どもはどうしても見えるほうから刺そうとする傾向があるので)、糸を引っ張りきれずに裏側を見ると糸がからまりそうになったりしていたことがあったが、何度か繰り返すうちに、指す場所を慎重に確かめたり、裏側の状態を気にして糸をひっぱったり、私が声をかけなくても自分で考えて針を進めるようになった。
20分ほどたった頃、疲れていないか聞いたところ、「大丈夫」という。ずっと集中し続けて大変なはずなのに、にっこりと笑顔で見つめ返す。結局、そのまま続けて最後まで仕上げてしまった。
満足そうなサファちゃんの表情。お母さんやお姉さんに作品を見てもらうと、これまたとびきりの笑顔を見せていた。誇らしそうな笑顔。どこの国にいても一緒。子どもは簡単に大人の予想を裏切ってしまう。この上なくうれしい裏切り。
どう? あなたが思っているよりも、もっともっとできちゃうんだから。こうした瞬間に出会うたび、子どもの持つ力の素晴らしさに驚かされる。
お母さんが昔作ったという、刺繍が施されたベッドカバーを持ってきて見せてくれた。ピンクの糸で植物の図柄が美しく刺されていた。それを手にしながら、お母さんがある素敵なエピソードを聞かせてくれた。
子どもたちの掛け布団のカバーにはおばあちゃんが刺した刺繍が施されているとのこと。ひとりひとりの好きな色を聞いて、その色で「おやすみなさい」と刺繍されているとのことだった。
大人たちの包み込むような子どもたちに対する愛情も、どこの国も一緒。安心して、ぐっすり眠って、大きく大きくなーれ。すこやかに、どうか無事に、健康に育ってほしい。祈るような思い。
サファちゃんの初めての刺繍。
太陽の刺繍。
これからはきっと、お母さんに教わりながらいろいろな図柄を刺していくのだろうな…。サファちゃんが刺繍を刺す姿を想像して、何だかほんわりとした気持ちになった。
Bana (JIM-NETボランティア)
写真(上から サファちゃんとBanaさん以外は、サファちゃんの作品)
げらげら笑う太陽/マフムードとサファ/刺繍するサファちゃんとBanaさん/きれいなお姉さん/太陽の刺繍)
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