現地情報アンマン2006
ウールな羊たち
ウールな羊たち
 朝、空を見上げると、とにかく「あおい」。
 生い茂った葉の間から顔をのぞかせるオリーブの実もまだ「あおい」。ふと、足元の大地に視線を落とすと、「なんじゃこりゃ?」
 ホンモス豆を刈り取った後の乾いたレンガ色の大地に、爪楊枝か竹串のようなものが見渡す限りつったっている。そういえば、昨日、このあたりを暑苦しい身なりの団体がうろついていた…。これは“夏でもウール”な羊たちのしわざだ。
 かろうじて枯れ残ったホンモス豆のひこばえの横枝と葉っぱだけ食べる。
 食欲旺盛な彼らも、垂直に立つ茎はさすがに食べられないらしい。立ち去った後には、一面の爪楊枝とマーブルチョコ(糞)が残る。
 この一団の構成メンバーは、ロバに乗った羊飼い、やたらと職務に忠実な犬(「ここは公道なんだから歩いたっていいでしょ」と抗議したくなるくらい吠えついてくる)。そして、向こう見ずなヤギと、自分の前にあるだれかのお尻しか見ない羊…。
 夏でもウールを手放さない彼ら(不思議なことに人間も…)もさすがに夏の日差しはこたえるらしい。おなかイッパイになると、昼寝の場所を探して松の木陰で押し合いへし合い。
 こういうときに、昼寝をしないでちょこちょこ動き回っているのはやっぱりヤギ。崖の上に勝手にあがって羊飼いのお兄さんにおこられている。のんびりやの羊飼いと駆けずり回って職務まっとうする犬、向こう見ずなヤギと臆病な羊、これで結構うまくいくらしい。
 のどかでいいなあ。

 アラブ系のTVチャンネルをつける気になれない。
 今まで、血なまぐさい映像はイラクかパレスチナかイスラエルだったのに、そこにレバノンが加わった。先日、イラクで、ついに私の知人が“殺された”。
「アラブの子どもとなかよくする会」が資金を支援しているバグダッドの貧困地域でのサマースクール(パソコン、英語)は、こんな中でもがんばって続けていて2年目になる。様子をHPで紹介して寄付を募ろうともちかけたら、イラク人スタッフに断られた。
「日本から寄付をもらっていることがばれたら命がない」
「日本語のサイトだよ?」
「寄付金より自分や子供の命が大事ですよ。公表するのはサマースクールが終わってからにしてください。」彼はとても慎重だ。だから、こんなイラクで今までなんとか生き延びているのだ。
 白血病のムハンマドは化学療法のため入院していたが、昨日退院。治療は順調。でも、滞在費も帰国の車代もない。
 ファルージャの自宅の近所が襲撃されたのをきっかけに歩けなくなってしまった白血病のヒジュランは今日、脳と全身の検査を受ける。
 右足を切断したアヤは義足を受け取った。成長期で身長が伸びるのに、3か月ごとにしか長さを調整できないため、義足を長めにしてあるようだ。昨日は、もてあましているようだったのに、今日は右足で爪先立って、上手にバランスをとって歩いている。

     また、来週に続く…。 

06年7月29日
(西村陽子 JIM-NET/アラブの子どもとなかよくする会 エイドワーカー。写真も)
※ 写真は「道に飛び出しピザ屋のおにいさんにおこられるヤギ」。JIM-NETアンマン事務所付近で