現地情報アンマン2006
物価高のアンマン
物価高のアンマン

 

 ちょうど、白血病のムハンマッド君の親父がやってきたので話を聞いてみました。(右写真 ムハンマッド君とお父さん)
「ヨルダンは物価が高くて大変だ。かといって、イラクには戻れないよ。私の住んでいる地域はスンナ派が多いので、米軍やイラク警察がいる。攻撃してくることもしょっちゅうだ。」
「ムハンマッドはサッカーが大好きだけど、今は、化学療法で強い薬を使っているからそれどこれではないよ。プレイステーションを買ってやったんだが、この間はかんしゃくを起こして壊してしまった。」
「俺は、この年なんで、サッカーなんかやらないよ。農家のオヤジだから、あんまり興味もないけど。」
「私は2002年から2003年にかけてよくイラクへ行きましたけど、カフェとかじゃ、サダムの出てくるTVより、みんなサッカー見てましたよ。」
「サダムといえば、イラクのTVは毎日サダムが出てくる。俺の友達は、TVにサダムの写真を貼って、『これならスイッチを入れなくてもTVを見ているのと同じだ』といって喜んでいたよ。」
 話がどんどん違う方へ行き、ムハンマッド君がどれくらいワールドカップを楽しみにしているかということがよくわかりませんでした。「砂漠のゴール作戦」を説明しましたが、
「何を言っているんだ?! 俺は、農民だ。鶏の話なら得意だぞ。」とはぐらかされてしまいました。
「そうは言っても、TV中継は楽しみにしているでしょ?」
「TVだって!? 何を言うか! この間は、がんのドラマをやっていた。主人公が死んじゃうんだよ。それを見てアハマッドは自分が死んじゃうと思ったんだ。泣き出して大変だったんだ。TVはなんて不謹慎なんだ。もうTVは見せない!!」と怒りを隠さない。(右写真 今年4月。家族を全員引き連れてアンマンに出てきたものの生活は厳しい。)
 そしていよいよ、ワールドカップが始まってから、ムハンマッド君のオヤジがご馳走してくれることになり、アパートを訪ねました。もうTVは見せないと言っていましたが、部屋ではイラクの衛星放送が映っていました。ムハンマッド君も、治療の効果が現れて元気になっています。
「ワールドカップ見ている?」
「うーん、TVでは、サッカーの番組やっていないんだ。」としらけきっていました。
 ムハンマッド・ハビーブ君(12歳)は、昨年白血病と診断され、ヨルダンのキングフセインがんセンターに治療にやってきました。(左写真は、05年11月、キングフセインがんセンターで。)ムハンマッド君の家があるバグダッドの郊外タールミーヤ地区は、劣化ウラン弾で攻撃されたらしく、放射能汚染された鉄くずなどにムハンマッド君は触って遊んでいたとのこと。
 タールミーヤ地区はスンナ派が多く暮らす村です。。
「米軍だけでなく、シーア派の民兵が襲ってくるんだ。」お父さんの話によると、家も爆撃されたそうです。それで、家族全員を連れてきて、ムハンマッドの治療が終わるまでは、アンマンにいたいようでした。
「今のイラクは地獄。子どもたちのことを考えたらヨルダンで暮らしたい。しかし、この物価の高さ。これじゃ食っていけん」

 ムハンマッド君は「早くイラクに戻って、友達に会いたい。学校にも行きたいなあ」とさびしそうでした

 弟のナジム君は、ちょうど昨日ブラジルと日本の試合をTVのニュースで見たといって、家族でTVを見ているところを絵にしてくれました。(左写真 絵を描くナジム君。後ろの小さい子がアブディ。画像をクリックするとナジム君の絵が表示されます。下の小さい絵は、ムハンマッド・ハビーブ君の描いたワールドカップ、日本vsブラジル戦。絵をクリックすると絵の拡大画像が表示されます。)


 やはり、家族一緒にいられることがまずは一番大切です。
「ばらばらだと、心配が増えるよ。イラクにいる家族は爆撃とかテロとか大丈夫だろうかっていつも電話しないといけないし、イラクに残った家族は、ムハンマッドの様態が気になってしょうがない。こうして一緒だと、心配は半分になる」とお父さんは言います。
 その後、しばらくして、薬剤師のハイサムのところにムハンマッドのお父さんから電話がありました。
「大変だ! 大変だ!」
「どうしたんです、ムハンマッドのお父さん?」
「実は、下の2歳になるアブディが…」
「え、どうしたんです?!」
「ムハンマドのナントカカントカというがんの薬を全部一息で飲んでしまったんだ」
 甘い味付けがしてあるのでしょう。アブディ君は、ジュースか何かと思って飲んでしまったのです。
「ああ、その薬なら、大丈夫ですよ。抗生剤だから、飲んでも死にません」
「それは、よかった。よかった。しかし、ムハンマッドの薬はなくなってしまったぞ。ムハンマッドの薬を買わなければいけないのに、お金がないよ…。」
 ムハンマッドのお父さんは電話の向こうで頭を抱え込んでいるようです。
 今のイラク、仕事がありません。自分の身を守るので精一杯です。ユニセフの最近の調査では、15%が月15ドル(約1700円)以下で生活する「極めて貧しい」状態。2歳未満の乳児の栄養失調は12〜13%(イラク戦争前の2002年の4%を大きく上回っている。)
JIM-NETでは、本の印税や、スタッフからのカンパで患者の経済支援も行っています。今後は里親運動などを展開すべく調査中です。

佐藤 真紀 (事務局長)