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湾戦岸争から15年 イラク戦争から3年
特別シンポジウム 私たちはイラクとどう向き合うのか」 リポート

 今のイラクを語るにはこれ以上はないという方々を迎え、去る3月19日にシンポジウムが行われました。 以下はそのリポートです。
                          (リポート:CADU-JP:藤井 正子)

   時:06年3月19日(日)午後3時〜6時  ところ:カタログハウス セミナーホール

パネリスト:

酒井 啓子 (東京外国語大学教授) / 柴田 久史 (おかざき塾事務局長) / 竹沢 顕 (NHK報道局国際部) / 佐藤 真紀 (JIM-NET事務局長) パネリストのプロフィール

共催: JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク) / カタログハウス / JVC(日本国際ボランティアセンター) / CADU-JP(劣化ウラン廃絶キャンペーン)



I
「イラク戦後統治と中東社会への影響」

 中東研究の第一人者である酒井啓子さんが、現時点のイラクの政治的社会的状況を理解するのに重要なポイントを指摘した。


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 ムハンマドの「諷刺画」問題の解釈

 一般メディアは、イスラム教徒はとても厳格なので、西欧近代社会に冒?されたことに強く反発している、というように「文明の対立」という図式で解釈している。しかしそれは本質でない。根底には昨今のムスリム世界における政治的フラストレーションがあり、フランスの移民の暴動、ロンドンの爆破事件などをとっても、それを見て取ることができる。
 イラク戦争の開戦時、ブッシュ大統領、ブレア首相、小泉首相、みな口を揃えて、「平和のための戦争」を唱えたが、結局不安の種をまき散らしたに過ぎない。
 湾岸戦争当時、サウジ・アラビアやクウェートはイラクの対戦国であったが、その後の経済制裁を含めてイラク国民の困窮する姿は、近隣ムスリム国に深い痛みを共感させた。パレスチナにおいても国際社会はイスラエルの占領統治を黙認し続けているし、チェチェンにおいても、アフガニスタンにおいても、不正義と抑圧が「合法的」行われている。それによって、大きな反感が蓄積されている。
 実態は明らかでないが、インターネットや衛星放送を通じて情報や認識を共有している青年層に、「イスラーム共同体」の構築を唱えることが流行のように広がっている。それが「アルカーイダ」のような「過激派」の出現の背景となっている。
 これらの状況を理解するのに、前提としてまず第一に見過ごすべきでないポイントは、貧富格差の問題でもなく、「近代西欧社会」対「前近代イスラーム」という構図でもなく、理不尽なことをされ続けていることによる大きなフラストレーションがムスリム世界に蓄積してきているということである。


A

 イラク戦後処理の失敗
 イラク戦争は戦後処理のシナリオがまったく杜撰なまま開戦された。強固な中央集権体制は壊されたが、社会経済的状況は悪化し続けている。04年6月暫定政府の成立、05年4月移行政府成立、その後の憲法草案提出、連邦議会選挙というニュースを順に耳にして、民主化のプロセスを徐々に踏んでいっていると思いこんでいる人も多い。しかし実態は、05年で7千人を超える民間人の死者が出るほど治安が悪く、生活がよくなっているということはない。電力、上下水道も回復せず、毎日のように銃撃戦があちこちであり、失業率も高い。
 移行政府は計画的復興の見通しを持たず、米英が政治的権力の確立を最優先して、急いで下駄を預けたようなもので、主要ポストもシーア派に偏っている。そのため、かつては宗派対立などなかったのに、「イスラーム主義 対 旧体制式ナショナリズム」という新たなイデオロギー対立を生んだ。

U「イラク戦争報道とその課題」

 フセイン時代からイラクの取材を担当してきたNHKの竹沢顕さんが、イラク戦争がどう伝えられたか解説した。途中、同様のテーマのNHK-BSの番組も抜粋で上映された。

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TVによる戦争報道の歴史
第二次世界大戦中、国威発揚のためのストーリーが映像化された。ベトナム戦争のときは、従軍取材によって戦争のむごさが露見した結果、反戦運動が活性化した。ために湾岸戦争のときは、米政府によって、徹底的に情報が統制された。イラク政府側からも検閲や加工された情報しか得られなかった。

A

今回のイラク戦争報道の特徴
 前線まで従軍取材が許されたが、軍の規制下に厳重に置かれ、情報戦に利用される面も大きかった。現在我々外国人ジャーナリストが取材に現地に行くときは、アンマンからオーストラリアの民間警備会社に警備されて、イラク国内の取材拠点に入り、その囲いの中にとどまる。NHK、BBC、ロイター、NYタイムズなどが同じところにいる。イラク人のスタッフとの協力で情報を収集し発信する。
 「早い」「生の」「映像」の商品価値が高いメディア産業の中で、どこに一線を画していくのか、何をどう伝えるのが役割なのか、メディア側が自ら問い続ける必要がある。一方、商品価値が高いということは、それが一般視聴者から求められているものであり、センセーショナルな映像を安易にばらまくメディアもある。
 イラク戦争において新しいことでは、インターネットを通じての個人レベルでの情報のやりとりがある。真偽は疑うべきものもあるが、イラク人の個人ブログからの発信もある。
 視聴者には、できるだけ複数のメディアに触れ、批判吟味する眼を養ってほしい。さらに受け手であるだけでなく、メディア側に意見を発信してきてほしい。NHKとしても、イラクのことを忘れることなく、息の長い報道を続けていきたい。