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イラクの男の子たちからの贈り物
(07年2月)
アリが大好きなお母さんと手をつないで歩いてくる。アリは「ヨウコは一人でお出かけなの?」と私にたずねる。がんで両目を失ったアリに私の姿は見えない。「ヨウコはもう大人なのよ」という母親に「つきそいもなしで、女の人が一人ぼっちで外を歩くなんてかわいそうだよ」とアリはこたえる。4歳の"小さなジェントルマン"。

家にお客さんが来たとき、飲み物や食事を運ぶのは男の子の役目。ハビーブ家で、いつもはお兄ちゃんがするけど、今、お兄ちゃんは白血病の治療でとてもつらい。今日は、体の小さなナジムが腕をいっぱいに伸ばして、紅茶のグラスがたくさん並んだお盆を持つ。恥ずかしがったりせず「どうぞ」とお客さんに礼儀正しくすすめる。ナジムは9歳、働き者の次男坊。
"小さいハイダル"はバグダッドの路地裏で出会った少年。たぶん小学生。学校には行かず、いつもおなかをすかせている。ある日、ハイダルはひとかけらのチョコレートを手に入れた。ちょうど通りがかった私に食べろとすすめる。断わっても、断っても、チョコレートの半分を私の口に押し込み、満足そうにつぶやく。「こうやって一緒に食べるのがいいんだよ。」
"大きいハイダル"もバグダッドの路地裏で寝泊りしている少年。たぶん17歳くらい。イラク戦争の年の冬、突然、バグダッドの街に爆発音が鳴り響いて、地面がぐらっと揺れた。流れ弾をさけるため、彼らのねぐらに飛び込んだ私に「怖がらなくていいよ。オレがついてるから」と薄汚れたジャンバーの胸をたたいてみせた。
ムスタファの左足は戦争中に米軍のヘリコプターに撃たれて傷だらけになった。何度も何度も手術をした。薬も設備も満足にないバグダッドの病院での手術が終わったムスタファに父親が言う。「ヨウコが薬を取り寄せてくれたんだよ…」
コクンとうなづいたムスタファが私を枕元に呼ぶ。そして、小さな小さな声で言った。
"アイ・ラブ・ユー・ヨウコ"
8歳のムスタファが知っている英語はほんの少し…。私は答えた。
"アイ・ラブ・ユー・ムスタファ"。
たくましくて、心優しい、イラクの"小さなジェントルマン"たち。"アイ・ラブ・ユー"は、とても大きくて、とても深い言葉なのだとイラクの男の子たちが教えてくれた。
「あなたのことをほんとうに大切に思っている…」、それが、"アイ・ラブ・ユー"なのだと
西村 陽子(JIM-NET/アラブの子どもとなかよくする会)
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