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JIM-NETはイラクのがん・白血病の子どもたちの支援をしています。



  (5) 6月の日曜日


  雨は降らなかったものの、湿気が多く暑い日曜日、ドクターの買い物に同行しました。ショッピングセンターで、ジュースを飲みながらしばらくおしゃべりをしました。ドクターやイラクの人々の生活のことが主でした。
 イラクの人たちはすごく家族や友達を大事にしているし、それをいろいろな場面で示しています。例えば、お酒を飲まないから「友達と飲みにいく」ことはありませんが、友達が家族を連れて集まり、皆でご飯を食べるガーデン・パーティーのようなことは一般的だそうです。子どもが遊ぶのを見守りながら大人達はおしゃべりを楽しむというのはとてもほっとする光景です。ただ、「今はもうできない状況だけど」と付け加えられたのが残念でした。男性も同僚や友達と、家族や子どものことをよく話すということや、誰かが結婚をしたら友達がそれぞれ生活に必要な家電などを一つずつ贈る習慣があるのも印象的でした。イラクと日本の結婚事情の話でも盛り上がりました。

 ふとしたことから煙草の話になりました。今、イラクではストレスのせいで大量に煙草を吸う男性が多いそうです。若い女性は煙草を吸うことが恥ずかしいとされていますが、おばあちゃんになると吸っている人が多いのだとか……。
 イラクの人々が今、とても厳しい状況に置かれていることは頭ではわかりますが、抱えているストレスがどれほどのものか本当に理解することは、私には難しいことです。安心して外に出ることができない、薬や安全な水が手に入らない、家族が、子ども達ががんにかかり亡くなっていく、長い経済制裁と戦争による疲弊……。日本にいては想像できないような過酷な状況に言葉を失います。でもそれは私たち日本人にも関わりがあるのだということを忘れたくありません。
 そして今のイラクで医師として生きることも、とても大変なことに違いありません。もし自分がイラクの医師だったら……と、つい考えます。
 前回長崎で研修していたドクター・モハメドとドクター・イドゥリースも話していましたが、現在医師がどんどんイラクを離れています。ドクター・バハによると、バスラから出国した医師は少しだが、バグダッドはさらに状況が悪いのでたくさん医師が海外に出て行っているとか。周辺諸国に移る医師が多く、イラクの医師は評判が良いので仕事に困ることはないとのこと。実際ドクター・バハも、オマーンにいる友人から連絡があり、オマーンにくれば仕事を紹介できると言われたそうです。
 中には、たとえイラクに残りたいと思っていても出て行かざるをえないケースもあるそうです。何者かに、出て行かなければ本人や家族を殺害すると脅迫されるというのです。殺害や誘拐も多発しており、医師以外もその対象になっています。「つい先日も、工学部の有名な先生が殺された。なぜかはわからない」ということでした。
 以前ドクター・モハメド達が、はっきりとイラクを離れないと言っていたのを思い出したので、ドクター・バハにイラクを出ようと思わないのかと聞いてみました。すると、さらりと「その気はない」とのこと。「一人ならそうすることもできるけれど、今の自分には妻と子ども達と親がいる。イラクでは家族の結びつきはとても強い。私はいつも彼らのことを考えているし、親を残してイラクを出ようとは思わない。それに医師がみんな出て行ったら誰が患者を診る? 出て行く人と残る人のバランスをとらなきゃ。」うーん、私の想像していた「悲壮な覚悟」のような雰囲気はまったくありません。むしろ淡々としていて、冷静にするべきことを見つめている様子でした。



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