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JIM-NETはイラクのがん・白血病の子どもたちの支援をしています。


(2) Iraq, wars & suffering 
   ―「アジアとむすぶ市民の会・長崎」総会にて



  4月22日、金沢から戻ったその足で私たち「アジアとむすぶ市民の会・長崎」の総会会場に向かいます。総会の後に、一般の方にもアナウンスをしてドクターの講演会を開くことになっていたのです。昨年はドクター・モハメドとドクター・イドゥリースの講演、その前の総会ではイラク戦争前に医薬品とサッカーボールを届けた会員の歯科医師・楠田昌子さんの講演を合わせて行いました。「アジアとむすぶ市民の会・長崎」では、イラクの医療支援は活動の大きな柱として定着しています。
 講演では、Iraq, wars & sufferingと題して、三度の戦争(イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争*1)と経済制裁を経てイラクがどういう状況にあるかを説明した上で、特に子どもの健康状態、医療の現状が語られました。小児がんの子どもの症例やがん患者数、死亡率の推移、栄養失調の割合などが写真やグラフで示されます。前回研修に来た医師達の報告である程度知っていてもやはりショックです。初めて知った人は事実を受けとめることができるのだろうかと思うほどです。
 講演には会員以外の方もたくさん来てくださいましたが、マスコミの取材が想像以上に多くありました。講演が終わった後、ドクターは記者さん達に取り囲まれていました。イラク人が来崎したという話題性もあるのでしょうが、被爆都市長崎とのつながりを見いだしての関心の高さであればなお嬉しいと思いました。願わくばたくさんの長崎市民に関心をも持ってかかわってくれますように。

 講演は以下のような内容でした。
 イラクは人口約2600万人、18の地域に別れた国です。ペルシャ、ローマ、ムガール、トルコ、イギリス、アメリカに侵略されて来ました。1980年から1988年のイランとの戦争では1000億ドル(10兆円)の損失があり、国家予算のほとんどを戦争に使ってしまいました。イラクがクウェートに侵略した時には33の国がイラクを攻撃し、インフラをほとんど破壊しました。91年から2003年の12年に及ぶ経済制裁はさらにイラクの人々に打撃を与えました。
 21668戸の調査(2005年4月〜5月、Iraqi central organization for statics & information)によると、イラクの現状は以下のようになっています。
1. 安全な水を利用できるのは54%に過ぎません。
2. 78%の家庭に日常的な電力の供給停止などの問題が起きています。
3. 36%が衛生的でないトイレを使っています。

 また、治安の悪化は医療面に様々な影響を与えています。現在、病院の医療サービス供給能力は対人口比で以前より落ちています。占領軍の攻撃を恐れて医師が病院に来なかったり、道路閉鎖・夜間外出禁止令で患者が重傷でも病院に行けない場合があります。2005年の1月から4月までに160名もの医師が誘拐されました。
 このような状況ですから、人々の健康の状態が深刻であるにもかかわらず、医療に使われるためのお金が治安維持に使われてしまっているのです。病院のものが略奪されることもありますし、そもそも病院の施設、電力、水、機器、薬も不十分です。品質管理も行われていませんし、救急車両のサービスも好ましい状態ではありません。
 妊婦、こどもの健康の状態について、国連の調査によると以下のことがわかっています。人口のほとんど50%が子どもです。乳幼児の死亡率は1000分の100、5才になるまでに亡くなる子どもは1000人あたり133人です。最新の調査では加盟国195か国のうち5才以下の死亡率がイラクより高いのは32か国しかありませんでした。原因は急性の呼吸器系統の感染症(70%)、下痢、はしかなどです。
 生後6か月を過ぎると栄養失調の子どもの割合が増えます。生後7か月から12か月で36、9%、13か月から24か月までだと34.6%になります。ちょうど成長の著しい時期です。(25か月から36か月、つまり2〜3歳では9.3%になり、その後減少)
 また、死産の割合は10万人のうち291人、平均寿命は58.7歳です。過去10年間で結核の率は、10万人あたり46.1人から131.6人に上がりました。ワクチンの不足による病気の増加も見られます。
 ご存知のように癌も増加しています。どうしてこのような病気が起こっているのか調べる必要があります。WHOで働いているイラクの科学者が調査を計画していますが、治安の問題もあり実現していません。当然、これらの健康被害は劣化ウラン弾によって生じたものと疑われます。湾岸戦争では350トン、イラク戦争ではその3から5倍も使われました。現在、空気中の放射線の量は通常の7倍、地中では10倍にもなっています。
 バスラでも癌による子どもの死亡率は急激に増加しています。バスラのがんセンターでは、小児がんの死亡者数は1988年は20人に満たなかったのが、2002年には140人近くになっています。
 私の勤めるバスラ・ゼネラル・ホスピタルの小児科でも、常に薬が不足しています。緊急病棟はとても小さく、6つしかベッドがありません。保育器や酸素ボンベもとても古いものです。外来はこの写真のように常に混んでいます。 

 これはバスラの20年程前の写真です。水と緑がとても豊かな土地でしたが、すべての戦争*2で戦場となったため、経済基盤が破壊され発展が止まってしまいました。

*1 イラクでは、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争をそれぞれ第一次湾岸戦争、第二次湾岸戦争、第三次湾岸戦争と呼んでいる。アメリカでは、湾岸戦争を第一次湾岸戦争、イラク戦争を第二次湾岸戦争と呼んでいる。

*2 イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争



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